なんとか日本のコメ農業を守りたい!【全文公開】農業法人代表 由井寅子がパブコメに意見提出 農林水産省「農産物検査法施行規則の一部改正案及び農産物検査法施行規則の規定に基づき標準抽出方法を定める件の一部改正案について」

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今回の法改正で危惧される最大の問題点

今回の法改正で危惧される最大の問題点を「今後の海外からのコメの本格輸入を見据えた検査規格の見直しという意味での規制緩和ではないか」と食政策センター・ビジョン21主宰の安田節子氏が指摘しています。

安田氏の指摘ではガット・ウルグアイラウンドでミニマムアクセス米を皮切りに現在では日本は米の年間消費量1割以上77万t輸入、TPP協定では無関税の輸入枠で7万t上積みし、更に日米FTAの追加交渉で米を含む農産物関税の削減まで打ち出しています。これらからコメの輸入自由化が進展すれば、かつての林業と同じように海外米の大量輸入で国内の米作り農家農業が大打撃を受けます。これまでなんとか持ちこたえてきた主食のコメの自給率さへ大幅に低下が懸念されます。命の糧である主食の供給を海外に依存すれば世界的な食糧危機発生の場合、国民の命すら守れません。

農業競争力強化支援法では、税金を使って開発してきた日本のコメ品種の権利・知見・開発体制自体を外資の種苗メジャーを含む民間へ明け渡す方針が決められました。主要農作物種子法廃止では、都道府県の農業試験場が担ってきた日本の多様な在来種のコメの種子の開発供給体制維持への国の予算措置が見送られ農家への公共のコメ種子供給体制を弱体化しました。そして昨年末可決された改正種苗法では登録品種では例外なく許諾なき自家採種が2022年4月から禁止され、コメでもかなりな品種で種子を農家が毎年購入するか毎年許諾料を払わなければならなくなります。

これら政府がTPPを背景に実施してきた一連の法改正により、国際種苗メジャーが開発・登録するF1種、ゲノム品種、遺伝子組換えなどのコメの品種普及が優先され、農家が種苗メジャーから種を買わなければ米作りが行えない環境づくりが急進展しています。

バイオメジャーの時代が到来

今、世界で商業流通する種苗では、農薬、化学肥料、種苗をビジネスとしてセットで扱うバイオメジャーによる寡占化が急速に進展。世界の種苗で6割、農薬で8割、化学肥料も同程度のシェアをバイエル(旧モンサント)、シンジェンタ(中国が買収)、コルテバ・アグリサイエンス(旧ダウ・デュポン)などわずか4つの企業に独占 。 農薬、化学肥料を大量に使う農業、遺伝子組換え作物とセット使われるグリホサートを主成分とする除草剤などで、世界の土壌や生物生態系は破壊され、更に農薬、化学肥料、遺伝子組み換え作物での健康被害が問題になっています。その為、世界各国の市民、農民とバイオメジャーの間で深刻な対立が起こり、バイオメジャーに依存しないオーガニックな農業、小規模・家族農業、在来種の農業、生物多様性と調和する農業が見直され、今や世界ではオーガニック、農薬削減がトレンドになっています。

一方で日本は世界の癌大国で癌患者が未だ急増中。癌など現代病急増の主因に食原病が疑われています。又、農薬と化学肥料依存型の農業では土壌や生物多様性の破壊、必須ミネラルやビタミンなどの栄養の少ない作物になってしまうだけでなく、グリホサート、ネオニコチノイドなどの農薬使用の弊害は農家はもちろんそれを食べる国民、またこれから生まれてくる子どもたちの健康にも重大な影響が懸念されています。主食のコメのタネをバイオメジャーに奪われればオーガニックな安心安全で栄養ある食を入手することが難しくなります。

「世界におけるGMO・グリホサート問題の現状」印鑰 智哉(世界の食問題研究家)
9/11(水)「NEXT AGRI PROJECT2019東京」 由井学長発表を公開 !!

「体内に入るものは取り返しがつかない。100%安全でないものは絶対使用するべきでない」

またゲノム編集高GABAトマト苗の家庭菜園への無償配布の問題や、RNA農薬などでは、不自然な遺伝子操作による人体や生態系への安全性が懸念されています。先日の食の安全・安心を創る議員連盟主催の「食品表示につき市民の声を聞く院内+オンライン集会」では、2023年から遺伝子組換え、ゲノム編集、無添加の食品表示が困難になる制度変更に対し、子育て中のお母さんからも懸念の声が発表されました。同議連会長を務める農水省出身の篠原孝衆議院議員はEUが採用する予防原則を例に「体内に入るものは取り返しがつかない。100%安全でないものは絶対使用するべきでない」と発言 。新型コロナパンデミックでは、遺伝子という生命の源を不自然な形で操作することで予期できない大災害を私たちは現実に体験しています。人類絶滅につながるリスクさへ懸念された遺伝子操作バクテリア漏洩が幸運にも2週間前に防がれた事例のドキュメンタリー映画の日本語版を私どもで制作し6月26日の農業と食のシンポジウムで上映、YouTubeに公開しますのでぜひご覧ください。

食品表示について市民の声を聞く院内+オンライン集会 子育て中のお母さんからも懸念の声
食品表示について市民の声を聞く院内+オンライン集会 農水省出身の篠原孝衆議院議員による発言
Don’t Let the Gene Out of the Bottle

また今回の「農産物検査法施行規則の一部改正案及び農産物検査法施行規則の規定に基づき標準抽出方法を定める件の一部改正案」がそのまま実施されるようなことになれば、私どもの祖先が大昔より受け継ぎ、守り育て、近年は農林省研究機関や都道府県の農業試験場と農家が継承し開発してきた各地域にあった多様性のある米の品種の継承や存続が危ぶまれます。この問題を、昨年の種苗法改正の衆院農水委員会の参考人質疑に登壇した食の問題研究家の印鑰智哉氏が、雑穀である粟や稗の農産物検査での過去の規制緩和で起こった問題を例に今回の規制緩和により、「極言すれば、日本のお米がなくなる、というほど大きな問題を引き起こしかねない問題があります。」と指摘しています。各都道府県が注力してきた米の産地品種銘柄廃止や多様な米の品種を集約する方針が実施されれば全国各地で公共と農家が共同して開発してきた米の多くの品種やそのタネが失われることにつながり、日本の伝統食継承にも黄信号が点り、F1種、ゲノム編集種、遺伝子組み換え種などの普及により食の安全が脅かされ、地域に合わせ開発・継承されてきたコメの在来種の多様性が失われることになれば大変残念なことです。

また、前述の安田氏の記事では、今回の法改正が、国内の農家や国内の消費者の利益を守るためのものではなく、この法改正により利益を得る企業や人達との利益相反の問題も指摘されています。本改正案の起点は今回のパブコメの所管省庁・部局である農林水産省政策統括官付穀物課でも国内農家と向き合い国内の農業を考えて仕事をしてきた農林水産省内でもありません。起点は「規制改革推進会議」が運営する第9回農林水産ワーキンググループに昨年4月に提出された(株)ヤマザキライスの意見書です。この意見書がほぼそのまま今回のパブコメの法改正に反映されています。「規制改革推進会議」とは一体どういう背景で設置された会議でしょうか、元農林水産大臣の山田正彦氏はJAcomのインタビュー記事で日米の交換文書のなかに「日本政府は米国の産業界の要望を聞いて、各省庁で可能な限りそれを検討させ可能なものについて、規制改革推進会議に付託する。規制改革推進会議の提言に日本政府は従う」と語っています。つまり「規制改革推進会議」とは「米国の産業界」の要望の受け皿となり、彼らの要望を日本の国政に反映するための会議であり、日本の農家や国民の利益を守る機関ではないということです。「米国の産業界」には前述の多国籍のバイオメジャーも入ります。

先の国会でRCEP批准での衆議院外務委員会の参考人質疑に立たれた農林水産省出身の鈴木宣弘東京大学教授が国会答弁の中で自由貿易協定の舞台裏についても裏話として触れています。政府間交渉では各省庁の官僚は本来は国民の側の利益や食の安全、食糧安全保障などを守り、国内の農家、農業を守る立場で国民の側に立ち国益を守るために交渉するものです。しかしこの証言を聞くと日本政府の官僚が外国側利権の代弁者となって、彼らに利用されている形になっており大変残念です。

農業破壊の問題を俯瞰的に理解し、解決策を参加者の皆様と考えていく会にしたい

一方でTPP種子法廃止違憲訴訟では東京地裁は種子法廃止の背景には、TPP協定があることや、今回の種苗法改正の背景にもTPP協定があることを認めており、協定自体が国民の生存権、基本的人権を脅かす違憲なものと考えます。コメの農産物検査規則を改定の背景にもこれら自由貿易協定が疑われます。昨年12月に山田正彦元農相、鈴木宣弘東大教授を招き「TPP協定などの問題を考えるシンポジウム」を開催しこの問題も世間に問いました。また鈴木教授には2月に「日本の食と農が危ない!―私たちの未来は守れるのか ~命の源の食料とその源の種を守る取り組みを強化しよう~」をテーマに講演いただきました。6月26日にもシンポジウムを主催します。遺伝子ワクチンとして健康被害が懸念される新型コロナワクチン問題を含め、この農産物検査規則を改定など農業潰しの問題につき基調講演をさせて頂きます。鈴木宣弘教授には「新たに露呈した農業破壊の構造とそれに負けない持続的農業の展望」を印鑰氏にも本パブコメ関連でも講演を依頼しています。今日本で行われている農業破壊の問題を俯瞰的に理解し、解決策を参加者の皆様と考えていく会にしたいと思います。

TPP協定などの問題を考えるシンポジウム 山田正彦先生、鈴木宣弘先生 講演会

今回の法改正がTPPなど自由貿易協定を背景にしたグローバル産業界の利権の受け皿である規制改革委員会の思惑であれば、利益を享受する利権と規制改革推進会議との癒着や利益相反も厳しく追求されるべきと思います。本パブコメでどのような意見が出ようと、自由貿易協定や内閣府の指示を覆して、農水省に今回の法改正案の方針を軌道修正し覆す権限が与えられているのでしょうか。逆にパブコメを担当させられている日本の農業の現実を知っている農水省の担当者は如何ともしがたいジレンマを感じているのではないでしょうか。国民の命や日本の農業を守り、食料の安全保障を確立することは本来国家運営の最優先事項です。であれば1国の長である首相自身が国益を守るために体、命を張って交渉・解決していくべきテーマのはずです。今回のパブコメでの意見は本来この問題で責任をとるべき総理、内閣府、規制改革委員会に問いたいものです。5月に提出した「緑の食糧システム戦略」のパブコメしかりです。パブコメを行ったことをアリバイに意見の内容いかんに関わらずパブコメ実施により国民の理解が得られたなどという問題のすり替えはなしにしていただきたいです。このようなおかしな状況に対して私たちができることは声をあげていくこと。その為、今回提出した意見を私どものホームページにも公開します。日本の主権者はグローバルな産業界ではなく国民であります。この不条理、閉塞感を変えていくためにも、国民に対し私どもの意見を公開しこの改正が適切なものであるかを問いたいと思います。今秋には国政選挙があります。ぜひ各政党の皆様には、今回のコメの検査規格の改正や種苗法改正、種子法廃止が日本の農業、農家、食の安全保障を守る為にも適切な選択であるのか、またRCEP、TPP、2国間のFTAなど自由貿易推進が国民の生活や健康、日本の農業を守るため合意になっているのか。政党や候補者は立候補に際しグローバルな産業界の利権側に立つのか、日本の国民、農家、消費者側に立つのか。ぜひ明らかにして選挙を行っていただきたいと思います。国民も候補者を選択する際には、子供たちの未来や国民の命、生活、食、日本の農業を守る政党や候補者か確認して投票してほしいと思います。今秋予定の選挙では本来の民主主義が行われることを強く願います。

私たちは自然の摂理に従って生かされています。

私たちは自然の摂理に従って生かされています。自然の生態系を大きく破壊する不自然な農業、例えば遺伝子を不自然に操作する遺伝子操作や、農薬、化学肥料依存の農業には未来はありません。そして農業は国の礎であります。過去、江戸時代の以前の大規模な飢饉や戦後の経済・食糧危機でも多くの日本の人々が餓死せずに生きながらえることができたのは農業のおかげです。自然型農業には窮地を救うポテンシャルがあります。そして、コロナ禍でも、免疫力の基本は食と栄養です。これを生み出す大元がオーガニックな食であります。このパブコメを契機に多くの国民が日本の農業の大切さや食糧自給率を高めることの大事さ、自然な農業や安心安全で栄養ミネラルある食こそが私達や子供たちの健康や幸せの源です。このことに多くの人に気づいて頂きたいと強く願います。

万物生命すべてに自然な農業と安心安全で栄養ある食の恩恵が行き渡らんことを !

日本豊受自然農代表 由井寅子

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