以下、プレスリリースが2020年11月30日に発表されましたのでご報告いたします。
プレスリリース
「種は大事!」種苗法改正法案が強行される中、日本豊受自然農 由井寅子代表が緊急会見
今秋公開話題の映画「タネは誰のもの」(制作 山田正彦元農相、監督 原村政樹)でも冒頭のシーンで登場!
種苗法改正法案の問題点 緊急会見を実施しYouTubeチャンネルに公開
静岡県と北海道の自社農場で米、麦、大豆、野菜、果実、ハーブなど300以上の農作物を在来種のタネで自家採種を行い栽培している日本豊受自然農代表が、臨時国会でも与野党で論戦が繰り広げられている種苗法改正だが、農家の立場から、自家採種の大切さと、今回の法改正の問題点について緊急会見し、その会見内容をYouTubeなどに動画公開した。
現在、種苗法改正法案は、以下に紹介するように、様々な問題点を棚上げして与党が強行採決するスケジュールで国会は進んでいるが日本の将来の農業、食の安全、食糧安全保障にも大きな影響を与えることが明らかになっている。また、登録品種の一律例外ないき自家採種・自家増殖禁止は、世界に例のない農家の自家採種の権利を大きく規制し大きな罰則まで規定されている。農家の権利をあまりに規制するバランスを欠いた不当な法案となっている。国会の審議の中で、法案制定で農林水産省が提出した統計データ(コメでの登録品種の比率など)に大きな虚偽報告が明からになっており、法案検討のベースが虚偽であったことも明らかになっている。今回は廃案にして、再検討し次回以降の国会での再審議すべきものである。衆議院、参議院の農林水産委員会での審議を見れば、これらの論点は明らかである。
タネはみんなのもの
人類が農業を始めて以来、何千年にもわたって、タネは農家が栽培とタネ採りを組み合わせることで、地域の合った多様なタネが開発されてきた。タネは、人類は農家が作物を営々と農耕を通じてタネを選抜しながら品種を改良してきた人類共通の公共の財産であり、ドイツのように生命に特許を認めないという考え方もあり、農家の自家採種を規制することには反対である。
以下に、今回緊急会見している中から、いくつかの論点をピックアップして紹介する。
寡占化進む世界の種子のビジネス
近年グローバル農薬・化学肥料企業がバイオテクノロジーにより雄性不稔など次世代のタネとりのできないF1種子が開発して以降、グローバルな農薬・化学肥料大手が、種子・種苗ビジネスに進出し、現在では3社で世界の種子・種苗ビジネスの6割を占めるほど独占が進んでいる。
日本での農家への自家採種規制は1998年、そして今回の改正で大幅な規制強化
1990年代からこれらの企業が種子の知的財産化を主張、日本でも1998年から種苗法が改定され、それまで自由であった農家による種とりが28品種(現在は約300品種)から規制された。ところがこれまでほとんど規制されていなかった農家による自家採種・自家増殖が今回の種苗法改正では、8000種以上の登録品種で例外なく一律に許諾を得なければ禁止となる。
しかも来年4月には改正法案が施行され、知らずに自家採種した登録品種の種子を蒔いて収穫した農家は、懲役10年、1千万円以下の罰金、農業生産法人では3億円以下の罰金、しかも共謀罪の対象となる重罰が科せられる。
種苗法改正の影響を農林水産省は過小評価して報告していることが国会質疑で明らかに
今回の改正で規制される品種は農産物の品種総数では1割程度だから国内農家に影響はほとんどないないと説明してきた。
しかし、農林水産省の国会への法案提出の趣旨説明や都道府県、ホームページなどで説明してきたデータが虚偽のものであることが判明した。コメは16%程度しか登録品種はないという国会に提出されたデータ自体が数字を過小評価した虚偽のデータであったことが、衆議院農水委の質疑などで明らかになった。
たとえば、一般品種として説明、掲載されていた新潟県の作付けの大半を占めるコシヒカリは97~99%が品種改良された登録品種のコシヒカリBLだった。
同じく愛知県での過半の作付けをし占め一般品種として説明されてきた「あいちのかおり」は、登録品種「あいちのかおりSBL」であることがわかった。
これらを計算するとコメでも4割が登録品種となる。他の作物でも人気品種に登録品種であるが多いことため、実際の栽培されている品種の数割が登録品種との指摘もあるが、農家に大きな影響がある改正にもかかわらず、正確なデータなどでてきてなく、農家がほとんど法案改正の実態を知らない状態である。
登録品種の自家採種をしている農家は5割という調査もあり、農家への影響は大きい
農林水産省は、登録品種を自家採種している農家はほとんどないと説明してきたが農林水産省の別の調査では5割程度がなんらかの登録品種の自家採種・自家増殖を行っているという調査もある。
自家採種禁止での種苗コスト負担増に国内農家の不安がつのる
すでに2017年施行の農業競争力強化支援法では公共の種苗の知見を公共から民間へ譲渡することが規定されており、2018年には主要穀類のコメ、麦、大豆の農家への種子の安定供給を確かなものにするため戦後つくられた主要農産物種子法も廃止された。今後、農産物の源となるタネの権利が公共から外資を含む民間へ移行する流れがある。農林水産省は、自家採種禁止になることで、種子種苗コストの農家への負担が増えるとは考えにくいと答弁を繰り返しているが海外で種が外資企業に独占されたケースや、国内でも公共から民間に移転すると種苗のコストは、10倍から100倍と大幅に上昇するリスクも指摘されている。
食料安全保障の視点からも登録品種一律例外なく自家採種の許諾性はリスクが大きい
世界の種苗ビジネスの寡占化が進む中で、タネの権利を民間に移し、許諾性にすることは、日本が災害大国であること、異常気象や新型コロナなどでただでさへ食料のサプライチェーンと食糧危機の問題が取りざたされる中、主要穀類の種苗まで民間へ移管することは食料安全保障という観点からもリスクが大きい。
世界でも主要穀類、小規模農家、オーガニック農家は自家採種規制免除が常識
実際、アメリカでは自家採種規制が進んでいるが、小麦などの主要穀類は自家採種規制の例外としている。一方でEUは10数ha以下程度の小規模農家やオーガニック農家は、自家採種規制の対象から外れており、国際条約でも、知的財産権関連のUPOV(ユポフ)条約でも農家の自家採種の権利は認められており、今回のの日本規制は、世界に類のない一方的に農家の自家採種の権利を制限する内容となっており、そのバランスに配慮すべきである。
タネの自家採種規制は「モンサント法」とも呼ばれ、世界各地で争い
実際、インドでは綿花の種子が外資種苗会社に握られ、遺伝子組み換えの米国の種子しか販売されなくなり、多くの農家の方が自殺した悲劇も起こっている。タネの自家採種規制は「モンサント法」とも呼ばれ、世界各地で外資種苗企業と農民の問題は、大きな争いとなっており、海外で起こっている事例を知ることも大切である。
映画「タネは誰のもの」出演者トークショーをYouTubeチャンネルに公開
今秋公開話題の映画「タネは誰のもの」(制作 山田正彦元農相、監督 原村政樹)では冒頭のシーンで代表の由井寅子が出演し、多様な品種が必要なことと野菜の自家採種の大切さを語っている。その関係で渋谷の映画館UPLINKでの上映会では、出演者の1人としてトークショーとして「種は大事」をテーマに講演を行ったがその映像もYouTubeなどに公開された。
参考リンク
種苗法改正に関する農水省のQ&Aに一言(「印鑰 智哉のブログ」から)
衆議院農林水産委員会 種苗法改正法案参考人陳述(「印鑰 智哉のブログ」から)
代表メッセージ! 種苗法改定案への緊急アクションのお願い
日本伝統の農家のコメづくり、食の安全も危ない!