2020年日本豊受グループは、日本宇迦魂(うかたま)種苗株式会社を設立し、2021年9月1日、農家が自家採種できる登録品種でない在来種・固定種の「豊受ステラミニトマト」のタネ販売を始めました。
「豊受ステラミニトマト」販売から始める理由
日本宇迦魂種苗株式会社 代表取締役社長 都築明美
なぜ在来種・固定種のミニトマトからの種苗販売を決心したのかというと、まず第一に安全面が保証されていないゲノム編集の農作物の開発、栽培、流通へ抗議し多くの皆さんにこの問題に興味を持ってもらいたいからです。日本豊受グループでは2004年の農業参入時から一貫して、自然なタネでの農業、在来種・固定種・自家採種でのオーガニックな農業の大切さを代表の由井寅子が主張し実践しています。問題点を指摘するだけでなく、一方で解決策を提案・提供しプラスな方向に社会をもっていくことが大切です。ですから、ゲノム編集のタネや食べ物に反対するだけなく、在来種、自家採種のトマトのタネを守り、そこから育ったトマトの食品を普及していく対策がとても大事だと考えています。
私どもの「豊受ステラミニトマト」の自家採種の量はまだ限られています。ミニトマトの生産量も限られています。ですから今回は30粒ずつ それも限定した量しか供給できません。これからはできるかぎりトマトの作付けを増やしていく予定です。そして皆様への安心安全な在来種、自然な農法での栽培や製品の供給も進めていますが、まだ1農家では皆様への供給量も本当に限られた中でスタートせざるを得ない事情もあり、この点はご理解ください。
このようにまだ十分準備が整っていない中でもタネの販売を決意せざるを得なかったのは、ゲノム編集トマトの放出と自家採種を大きく規制する種苗法改正という緊急事態のためです。
残念ながら、日本では食の安全審査も十分に行われていないまま今春からゲノム編集された高GABA含有のミニトマト苗が家庭菜園用に無償配布され、環境に放出されたからです。すでに契約農家での栽培が始まり、冬にはピューレの販売や青果での流通も計画されていることを知りました。食の安全や生態系・生物多様性、在来種の自然なタネを使った日本の農業、農家の存続までも脅かされている緊急事態であるからです。
購入していただく方へのお願い
今回、購入されたタネは栽培して食べて楽しんでいただくことに加えて、ぜひ自家採種、タネとりと翌年の栽培にも取り組んでいただきたくお願い申し上げます。1つの発芽した苗からうまく育てれば、数十個から多い場合は百個程度のミニトマトが収穫できる方もいます。1つのミニトマトには数十粒ほどのタネがあるので1粒のミニトマトの種から数千粒のタネにつながる場合もあります。1粒のタネでもこのような大きな可能性を持っています。加えて、この種は過去種とりされてきた方々を含めて人類共有の財産です。選抜、守りついできていただいたこれまでの農家やお百姓さんたちの大昔からの貢献にも感謝を感じながら育てていただければ有難いです。なお、ミニトマトの栽培とタネとりには様々なコツやノウハウがあります。タネを無駄にしないためには、そのコツをぜひネットなどでご自身で調べて予習していただいて取り組んでいただくことがお勧めです。何卒宜しくお願い申し上げます。
栽培方法は「ステラミニトマト」×「栽培」などで検索
自家採種の方法は「プチトマト」or「ミニトマト 」×「種」or「タネ」 ×「取り方」など検索
今回販売する「豊受ステラミニトマト」(洞爺)は、ほとんどF1種しか流通していないミニトマトの中でも珍しい在来種・固定種のタネです。もともと京都の種苗会社タカヤマシードが1992年に開発した品種です。その在来種「ステラミニトマト」のタネを2008年に在来種のタネを販売する野口種苗店から購入し自家採種を始めました。そして周囲が森林により隔離された洞爺自然農場のビニールハウスにて10年以上自家採種を繰り返した結果、今では洞爺の土壌や気候に固定化された固定種となっています。
このタネは非登録品種(一般品種)ですので、農家の栽培でも家庭菜園の栽培でも自家採種の規制はありません。美味しく家庭菜園でも栽培しやすいお勧めの品種です。
一方、トマトに限らず、日本政府が食の安全性も十分に検証されていないゲノム編集農作物の栽培や食品の流通を許可したこと、しかも表示や届出などの規制なしに開発、栽培、流通が行えると決定したことは大変問題ある判断で是正が必要と考えています。私たちも、とようけTVオンライン配信やスマホアプリとようけTV、YouTubeとようけチャンネルやSNSなどでの告知活動に加え、ドキュメンタリー映画「タネは誰のもの」、「食の安全を守る人々」、「実験室のビーカーから遺伝子を放出してはならない」などの告知・協賛・自主上映活動なども行っています。ゲノム編集トマト反対署名や遺伝子編集の種苗への表示義務化を求める署名、OKシードプロジェクトなどの種苗への自主表示を求める活動、ローカルフード条例など制定行政への働きかけ、学校給食のオーガニック化を進める全国運動、TPP種子法廃止違憲訴訟などにもご協力ください。
来年4月 登録品種の許諾なき場合は、例外なく一律農家の自家採種禁止への対応
2022年4月から改正種苗法により、登録品種は育主権者の許諾なしでは農家の自家採種が例外なく一律禁止となります。農林水産省の法案改正時の登録品種の自家採種禁止の影響は少ないという説明とは異なり、各地域の農業には大きな影響があり、農家の権利を奪い、負担を大きくする大変問題のある法改正です。
由井代表の種苗法改正反対 TPP問題シンポジウムなどこの問題に関連する動画や記事をとようけチャンネルや豊受自然農のブログへアップしています。「日本の農業と食を考えるシンポジウム」第9回 第10回 第11回 第12回でもこれらの問題を取り上げています。ぜひご覧ください。
日本の多様な在来種を守るために 在来種の自家採種での栽培を始めましょう
日本豊受自然農、日本宇迦魂種苗が在来種・固定種のジーンバンクの機能を果たし、将来に向けて日本の多様な農作物の在来種の種子と農業を守る活動に微力ながらも貢献してきたいと考えております。
農家が自家採種できる登録品種でない在来種・固定種の供給することで、登録品種でない一般品種・在来種の種子を農家や市民の皆さんが利用し、全国で在来種、固定種での自家採種の農業・栽培が広がっていくことが、日本の多様な在来種のタネを守り、食の安全と子孫たちの幸せ、食料保障にもつながります。
趣旨にご賛同いただける方から、ぜひ、ミニトマトから自家採種での栽培活動へのご協力をお願いできればと思います。
特徴 | ミニトマトの原産地は南米、現在流通しているミニトマトのほとんどはF1種ですが、ステラミニトマトは、日本で開発された数少ない在来種のミニトマト。ゲノム編集のミニトマトが開発され、栽培、流通がスタートしますが、私たちは在来種のミニトマトのタネと農業を守りたいと考えています。果色は赤。果肉厚く、糖度8度以上で甘みが高く美味しいミニトマトです。少量の供給となりますがぜひ皆様の圃場や家庭菜園で栽培してみてください。 果重15g程。完熟しても裂果が少ないので樹上完熟が可能。 |
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用途 | 生食。サラダ。ピューレ。ミネストローネ。コンポートなどにもお勧め。7~10月の収穫期には豊受オーガニクスショップでも好評販売中、レストランのメニューにも登場します。 |
栽培方法
蒔きどき | 3、4月(温床)5月(直播) |
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収穫期 | 露地栽培では夏~秋。(ハウス栽培では周年) |
播種期 | 温床で3月中旬。直まきは4月下旬以後。 |
種子加工 | なし |
種子消毒 | なし |
発芽適温 | 20~30℃(最低10℃〜最高35℃) |
播種法 | 苗作り・浅箱にスジまき 推奨スジ間隔 6cm。 種の間隔2cm位。 |
覆土 | タネの厚みの2、3倍まで。発芽するまで乾かさないことがポイント |
生育適温 | 昼間25℃~30℃、夜間10〜15℃。 30℃以上の高温では、着果・肥大・着色が不良となり、35℃以上では花粉稔性が低下し落花を起こす。 |
栽培法 | 箱播きした小苗をポットに移し、晩霜の心配がなくなったら露地に定植するなど、ミニトマトの一般的な栽培方法と変わりません。花房が重くなるため、支柱を立てての栽培が推奨されます。高糖度のトマトを作るには、雨よけなどして乾燥気味に管理し水分を控える。チッソが多すぎると樹勢が旺盛となり暴れやすい。あまり高温多湿でなければ、露地栽培も可。ハウスでの抑制栽培、促成栽培にも広範囲に適応する。 |
採種法 | 完熟果からタネをもみ出し、ポリ袋などに入れて2、3日発酵させ(途中水を入れると発芽してしまうので注意)、水洗して沈んだ種を新聞紙に広げて半日陽に干し、日陰で充分乾燥させる。 |
種子寿命 | 長命種子の部類。(4年以上) |
休眠 | ない |
種子保存法 | よく乾燥させ、紙袋に包み、低温低湿度の環境で保管する。 |