由井寅子代表が国会での種苗法再審議を要望 !
先の臨時国会で可決し12月9日に公布された改正種苗法ですが、1月22日から約2週間かけて農林水産省主催での全国9ヶ所での説明会が始まっています。1月25日の関東ブロック対象の説明会で由井寅子代表が国会での種苗法再審議を要望 !
以下、テープ起こしのため発言そのまま記載します。
わたしは豊受自然農の代表 由井と申します。私は静岡とそれから洞爺、北海道の方で約200反以上の農業をやっております。
自然農ですから在来種、固定種、自家採種のタネがメインです。
で、もちろん在来種のタネは守られていると尾崎課長が仰っていただきまして誠にありがたいとは思っておりますが、その在来種を民間企業のタネ屋さんがちょっといじってパテントをとるということはあり得ると思いますが、そうなりますと私、300種類の在来種・固定種・自家採種をやっていますが、その300種類のうちの一つでも二つでもそうやっていじくられまして特許をとられますと、私達は、何十年もやってきましたのに、使えなくなるわけですね(※1)。
こういう種苗法というものを今聞きましたけれども、農林水産省の方々は、日本の農業、日本のいわゆる林業、日本の漁業を大切にしようとしていただいているんですよね。
だからこそ私達は税金を払っているわけですよね。そして私達はこの国民に安全安心でそしてその上で栄養のある自家採種、固定種、在来種のタネで作ったものを食べていただきたいと思いまして農業をずっとやってきましたけども、このたびこのような種苗法改定とか種子法改定(※2)とか2年前の。こういうことをやられますと、農民が、気持ちよく、国民のために、大切な食事の大本の野菜とか、主要穀類を作っています。
これに対して私たち農民に死ねというような、このような改定をされてだれが気持ちよく農家ができるでしょうか。どうか考えていただきたいと思います。
食べ物は命の元です。で、種というのは生き物ですから、パテントなんか取れません(※3)。
そして、みなさんがね、いつも言っていらっしゃる この育成者権がどうのこうのといいますけれどね。それは海外で特許をとればよかったし、申請すればよかったことでありますよね(※4)。ですから農民に迷惑をかけていただくことはやめていただきたいんですね。
わたしら昔からうちも農家でした。うちの家族はずっと農家でしたけれども、その中で隣の農家が、種が無くなれば、種をお互いに分け合い、こういう風に仲良くやってきたわけです。
ですから種というものは、国営であるべきだし、品種改良は私たちの税金を使った国営で農林水産省の方が、種の品種改良をしてくれればいいだけでありまして、これをやりますと海外企業から、たとえばシンジェンタとかデュポンとか、例えばもとモンサントとかこういう方々が来た時にはどうしますか。
そうすると私たちの食べもの、今でさえゲノム編集の食べ物が日本ではOKになっているわけですよ。今でさえ遺伝子組み換えの食べ物が表示しなくていいという状態になっている。どうなんでしょうかこれは。
日本の国民のましてや人類の健康をあずかる農家に対して、こんなややこしい法律を作ってですね、どうやって私たちは、だいたいね、ほんとにね、こういう特性のぶれなんかもあるわけですわ。だって土が違うからぶれていくわけですよ。それからね
時間の関係もございますので簡潔をお願いします(※5)
はい 従属品種なんかもね、出てくるわけですよ。
こんなこと農家がいちいち考えながら、それで蜂がね、蝶々がね そうやって交配したらですね、彼らのパテントのものが私のものに混じったりするんですよ。
こういうことが海外で起こって、訴訟が起こっているじゃないですか。(※6)
もう一度これは国会で審議していただかねばならないことだと私は思います。
よく考えて、人類のためにも日本国民のためにもよく考えていただきたい。農林水産省の方々は本当に日本のことを考えていますか。
これは国防の危機だと思います。
よく考えてください。宜しくお願いします。
はい、あの種苗法ですね
今回改正させていただきましたけれども、この種苗法の目指すところというのは日本の農業の発展に寄与するためということでございまして、この農業の活性化に寄与する新品種がしっかりと農業者に供給されていくことが大事だという風に考えているという中で今回の改正をしなければ、結局、日本の国内で今まで品種開発に取り組んできた人たちがですね。
インセンティブを失うということになりまして、日本で優れた品種がつくられなくなってしまう、そうすると、日本の農業者としてもすぐれた新品種を使おうとすると、海外で開発されたものを使わざるをえなくなってしまうというようなことになりかねない。
そうすると結局ですね。われわれが意図しなかった、われわれが望まない結果がですね。あつまってしまうことにもなりかねないと、やはり対国内の育種に取り組んでおられる方がですね。
これからも、国内の農業にしっかり供給していただくという環境が必要だということも考えて今回の改正にいたっているということでございます。
当然のことですけれども、もう先般からご承知のことだと思いますけれども、今まで農業者が使ってこられた在来種というものはですね。この改正の如何に関わらず、引き続き農家の皆さんが自由に使っていただける品種として、この世にあり続けるわけでございます。(※1)
先ほどでてきましたけど在来種をベースにどこかをいじってパテントをとるというようなことはありうることでございます。
それは新しい品種、パテントとして登録するということですけれども、それはわれわれの制度から云いますと、在来品種をベースに区別性のある 今までの品種と区別できる違うものとして、新しい品種をつくられたということであれば、これは登録ができるということであります。
当然区別ある別の品種として登録されることになりますので、その新しい品種が登録されたからと言って、今まであったその在来種がですね。使えなくなるということはないわけです。
新しい品種としてその権利というものが生まれるということでございます。
でそのような形を積み上げてですね、より新しいもの、優れたものがですね。この日本の農業の世界に蓄積されてきて、今その成果をですね 農業者は享受をしているんだということです。
本当にわれわれ、種苗法というのは、この日本の農業を将来的に発展させていくために必要だという考えのもとで提案させていただいて、これで国会で議決をいただいて、新しい法律として準備をしているということでございます。その目指すところといいますのは新しい品種というのが世に出てきて、使っていただける。こういう関係を維持して発展させていく、というものであることをご理解いただきたいと思います。
- 1 種苗法改正案が最初にとりざたされた2-3年前、「在来種」は大丈夫、自然栽培、オーガニック農業には今回の種苗法改正は影響がないというような情報も流れ今でも農家の方で誤解しているも多いことは、「在来種(F1種や遺伝子組に換へ種子でない)でも登録品種となっている種子がかなりある」という事実を認識してないということです。野菜はF1種も多いですが、コメ、麦、大豆などの主要穀類の種子や、自家増殖が可能な芋類などはほとんど在来種です。 また、一般品種を現在栽培しているから大丈夫と説明を聞いていると納得されている方も多いですが、実は以下のような問題も認識しておく必要があります。秋の国会審議でも参考人質疑をされた印鑰智哉さんが指摘されています。
印鑰智哉さんのfacebook
コメで一般品種として認識され、作付面積の計算で一般品種としてカウントされ、コメの登録品種の割合は17%だからたいした影響はないという統計を今回の説明会でも使用されています。
しかし、穀類は1農家だけでの安定供給保障は難しく、原種、原々種から都道府県の農業試験場が種苗生産で協力しているJAなどと共同して地域で核となる種子の供給体制がとられてきました。
例えば、一般品種と思われていた「コシヒカリ」も新潟県や富山県では、病害虫に強い品種に改良された「コシヒカリBL」が90%以上とか、愛知県でも一般品種と思われていた「あいちのかおり」が既に、登録品種「あいちのめぐみSBL」に変わっています。
これらを考慮するとコメの作付面積での登録品種の割合は4割を超える可能性もあるということです。
つまり公共も関わって地域で維持している品種などでは在来種も品種改良で地域での種子の供給が変わることで作物の一般品種を栽培したくても、登録品種しか選択できなくなるような事例もあります。
さらに今回の種苗法改正では、育種権者の権利が様々な面で強化されました。これまでのように栽培試験なくても、書面上で特性表だけでの比較だけで判定され、登録品種の育種権者の権利侵害で農家が簡単に訴えられるようになります。
この点についても、印鑰智哉さんが「食」 問題の核心に触れ、無知を智に変える 食材の高騰、安全な食材の不足が加速 – 種苗法改正について -」の中でわかりやすく指摘しています。
また、山田正彦元農相が昨年制作し公開したドキュメンタリー映画「タネは誰のもの」の中でも、北海道の大豆の黒千石を例に特性表だけでの判定では難しい点が紹介されています。
山田正彦元農相は、種苗法改正、種子法廃止の背景にはTPP協定(外資バイオメジャー、シンジェンタ、旧デュポン、旧モンサントなどグローバル利権の圧力)があることを指摘されています。
先の国会での衆院農水委員会での質疑をされた篠原孝議員は、今回の背景に世界の種苗ビジネスの6割を3社で独占する種苗メジャーの国際展開にも触れ、戦後の林産物の輸入自由化、大店法規制緩和、漁業法改定、派遣法改定のようにエスカレートしていった事例をあげ、一度このような形で農家の自家採種の大幅な規制が進むと今後、農家に対する自家採種・自家増殖の規制がエスカレートしていくリスクを警告しています。
種苗法改正法案の国会前抗議行動での篠原孝議員のスピーチ
- 2 正確には「主要農作物種子法廃止」
- 3 大自然が創りだした生物や植物に、工業製品などの発明と同じように特許を認めるかどうかは欧州や発展途上国なども含めそもそも議論がある。種子に知的財産権を認める主張はハイブリッドの種子(F1種)が開発されビジネス化され数十年ほどの歴史しかない。
生命特許について
- 4 衆院農水委員会での質疑をされた篠原孝議員が生命特許について国会の場で指摘している。
- 5 もともと13時から1時間半のスケジュールであったが司会が14時からオンライン質問を始めたタイミングで会場の質問は14時15分からと案内していましたがオンラインの質問に答え終わった段階で14時25分前であった。なお、会場で質問を求められた際に挙手したのは私どもの代表だけであった。
- 6 海外では遺伝子交雑により多くの農家が知財侵害を理由に種苗メジャーから訴えられ破産した
補足コメント(豊受自然農スタッフ)
今回の種苗法改正では、国内外の育種権者の利益が強化され、農家の権利が制約される改正となっています。農家による許諾なき自家採種・自家増殖が禁止されていた品種数は種苗法制定後段々と増え約3百強に。これがこのまま改正種苗法が施行されますと、来年4月から8千品種(全品種の1割)の登録品種に例外なく一律適用されます。
自家採種・自家増殖規制については、各国では通常は例外規定あります。例えば、小規模・家族農業などの農家保護のための例外規定(EU他)、食糧安全保障を主要穀類の例外規定(米国他)、自家採種・自家増殖が基本なオーガニック農家の例外規定(EU等)等など。今回の改正種苗法のように農家に厳しい自家採種・自己増殖規制を行っている国はイスラエルだけと国会で農林省も回答しています。
なお、育種権者が農家に訴訟がしやすいように、DNA判定や比較栽培試験をしなくても、書類上、特性表のみで判断し訴訟できるようになりますが、たとえば、遺伝子組み換えやゲノム編集をして新しい性質を植物に与えて品種改良した場合でも登録品種になると思われますが、そうなると、おそらく植物のみかけはほとんど同じになると思われます。しかし、一般品種か登録品種かは目視で判断されるとなっています。そうなりますと一度登録品種になった場合、これまで使えていた一般品種は目視で登録品種と同じと判断されてしまい、罰則を受けることになります。こういったリスクなども懸念されます。
一方で国際条約でも農民の自家採種・自家増殖は、生存権・人権として保障されています。このように、今回の法改正でグローバルメジャー含む育種権者の権利だけが一方的に強化されてはバランスが崩れるので、在来種の種苗の地域での保護や農家の自家採種・自家増殖や食糧安全保障をサポートする制度や法整備なども検討が急がれます。
国会でも大きな論争となった法案であります。知的財産権を守る法整備を担当されている農水省の知財Gが今回説明会を開催していただきました。職務として担当の方も大変難しい問題を調整されて苦心されていることもよくわかります。
しかしながら、今回の種苗法改正の問題、タネの問題は、知的財産保護の視点だけから推進されるべきものではないと思います。
食糧安全保障や日本農業の未来を左右する国民にとってもとても重要な法案です。
本来は、農林省も知財課の担当任せにするのでなく、農家を含め関係者のニーズを受け止め、農林水産省内の政策全体をみて、政府内の調整もできる責任者が表に出てきて知財Gと協力して対応すべきではないかと感じます。
また、主要農作物種子法廃止や種苗法改正の背景に、TPP協定の問題があることが明らかになっており、国政の重要課題である種苗法改正や種子、食糧安全保障の問題に全くコメントすらしない菅総理の姿勢についても国民や農家のことを考えて総理の仕事をされているのか大いに疑問が残ります。
特に新型コロナパンデミックや昨今の緊迫する国際情勢からいつ戦争や食糧危機が起きてもおかしくない危機の時代に私達は生きているのではないかと思います。
これを機会の多くの方にもっとタネの問題、食の問題に関心をもっていただき、立ち上がってほしいと願います。
1月22日 農林省改正種苗法説明会での豊受自然農からの質問
1月22日全国対象の説明会では豊受自然農スタッフがオンライン聴講し、国会でも問題になった農林省配布資料のコメの一般品種の割合の統計数字の問題について質問しました。
参考リンク
(今回は可決されましたが多くの付帯決議が付けられました)