主要農作物種子法廃止に伴う農林水産省告示の整備へのパブリックコメントを本日提出しました

本日、日本豊受自然農から「主要農作物種子法を廃止する法律の施行に伴う関係省令の整備に関する省令及び主要農作物種子法を廃止する法律の施行に伴う農林水産省関係告示の整備に関する告示についての意見・情報の募集について」のパブリックコメントを農林水産省政策統括官付穀物課にFAXにて提出しました。

提出したパブリックコメント内容 平成29年(2017年)8月5日

農林水産省政策統括官付穀物課 法令係 ご担当者様 FAX 03-6744-2523   
「主要農作物種子法を廃止する法律の施行に伴う関係省令の整備に関する省令及び主要農作物種子法を廃止する法律の施行に伴う農林水産省関係告示の整備に関する告示についての意見・情報の募集について」   農林水産省政策統括官付穀物課が、平成29年(2017年)7月7日付にてパブリックコメントとして募集しています「主要農作物種子法を廃止する法律の施行に伴う関係省令の整備に関する省令及び主要農作物種子法を廃止する法律の施行に伴う農林水産省関係告示の整備に関する告示について の意見・情報の募集について」について意見いたします。

法人名 農地所有適格法人 日本豊受自然農株式会社
所在地 静岡県田方郡函南町平井1741-61
代表者名 代表取締役 由井寅子
info@toyouke.com
電話番号 03-5797-3371

目次

意見提出する法人についての補足説明

日本豊受自然農は平成23年(2011年)設立(代表取締役 由井寅子)の農業生産法人(現 農地所有適格法人)です。静岡県田方郡函南町(及び周辺市町村)及び、北海道有珠郡壮瞥町に圃場があり、稲、麦類(大麦、小麦、はと麦)、大豆、蕎麦などの穀物、さらに野菜、芋類、花卉・ハーブ、果樹など100種類以上の農作物を栽培しております。

私どもの農業生産法人は、自然な種子(在来種、固定種、自家採種)にこだわり、化学農薬、化学肥料は一切使わず、土づくりにこだわり、日本古来の農業の知恵を尊重し、自然型での農業による安全で栄養ある食の供給を実践し、これにより国民の食の安全、健康向上、国内食糧自給の向上への貢献を目指す農業に取り組んでいる農家です。

そして、主要農作物である稲、麦類(大麦、小麦、はと麦)、大豆などの自社の農作物を原材料に使った味噌、醤油、豆腐、豆乳、レトルト食品などの加工食品づくりや、ハーブや野菜を原材料にしたジュ-ス、シロップなどの飲料品製造、同じくこれらの農作物を原材料にした化粧品製造、加えて、自社農園の農作物を食べていただくために用賀(東京都世田谷区)での農園レストランやショップ、通販モール展開などを通じて、自然型農業と六次産業化で人々の健康を促進し、日本の農業復興と地域の再生を目指した事業に取り組んでおります。

意見①

主要農作物種子は「公共財」です。平成30年(2018年4月)以降も国と都道府県が「公共事業」として、主要農作物の種子の保存、安定供給が行えるように、特に「公共事業」として予算が保証されるよう、その後ろ盾となる農林水産省関係告示の整備を要求いたします。

 先祖代々日本人が営々と守り抜いてきた 日本の風土に根ざしたイネ、麦類、大豆など主要農作物種子の原種、原原種、優良品種は、日本、いや人類の「公共財」であります。

したがいまして、本来主要農作物種子は、人類の「公共財」として国によって保護され、その伝承、保存、安定供給が公共事業でもって保障されなければならないものと考えます。

そして、先祖代々日本人が営々と守り抜いてきた 日本の風土に根差したイネ、麦類、大豆など主要農作物種子の原種、原原種、優良品種である種子は一部の民間企業の私有財ではありえません。

主要農作物種子法は、昭和27年(1952年)に制定されて以来、改正を経て、この本来「公共財」であるイネ、麦類、大豆など主要農作物の種子を国と都道府県が大きく関わって農家と連携して「公共事業」として、種の保存、供給を保証してきた法律であり、この活動を行うための都道府県の予算の後ろ盾となる大変重要な役割をはたしてきた法律です。

主要農作物種子法は、平成30年(2018年4月)より廃止されますが、イネ、麦類、大豆など主要農作物種子を保存し、安定供給する事業は、日本の農業、そして国民への安全な食の安定供給を維持する国家の「食糧安全保障」の根幹となるものです。

平成30年(2018年4月)以降も国と都道府県が「公共事業」として、主要農作物の種子の保存、安定供給が行えるように、特に「公共事業」として予算が保証されるよう、その後ろ盾となる農林水産省関係告示の整備を要求いたします。

なお、先祖代々日本人が営々と守り抜いてきた、そして戦後は主要農作物種子法により、国と都道府県も協力して守ってきた、主要農作物の種子、またその保存、開発に貢献する施設やスタッフは、国家国民の「公共財」であり、これを民間企業へ開放、譲渡することなきようにお願いいたします。

意見②

主要農作物種子に関わる農業政策で最重視すべきは「食の安全」です。特に、主要農作物における遺伝子組み換え種子の商業生産が認められれば、「食の安全」の保障に加え、栽培されている非遺伝子組み換え種子の農作物への遺伝子汚染が広がり、主要農産物における生物多様性の維持についても取り返しのつかない事態を招くため、遺伝子組換え種子の国内商業栽培は禁止することを要求いたします。

平成29年(2017年)7月28日現在、「カルタヘナ法に基づき第一種使用規程を承認した遺伝子組換え農作物一覧」を公表しており、農林水産省は、主要農作物種子法の対象品種であるイネ、大豆の遺伝子組換え種子の商業栽培を認めています。しかし、安全性については多くの議論があり、安全性が確実に保証されない限り、EU各国のように予防原則の下、遺伝子組換え種子由来の食品の栽培、流通を禁止している国が目立ちます。

 政府の農業・食糧・種子の政策において、最も重要視すべきことは、「その種子から収穫される農作物が安全であり、栄養があり、健康を害さないものであるかどうか。」であると考えます。

そして、「安全性が保証できない食べものは国民に食べさせてはならない。」このことが「食の安全」政策では最も大切な政府が守るべきポイントであると考えます。

このことを念頭に、日本政府の種子政策は推進されるべきものと考えます。

意見③

国民が遺伝子組換え種子由来GMO食品を避けられるよう、政府に食品表示制度の改正を要求いたします。(食品表示は消費者庁の管轄かと思いますが)

日本では、DNAやたんぱく質の入っていない遺伝子組換え食品には食品表示規制がなく、飼料がGMOでも乳製品、肉、卵などには遺伝子組換えの食品表示規制がなく、現状では、正しく国民がGMOかNON GMOかを判断できる食品表示規制となっていません。(DNAやたんぱく質が入っていなくとも、また飼料としてGMOが使われる場合にも、遺伝子組換え種子とセットで使われる農薬による健康被害を指摘する専門家の指摘もあります)

合わせて、遺伝子組換え食品の表示規制をEU基準なみの厳密な基準に置き換えることを要求します。実際には、日本は遺伝子組換え種子由来(GMO)農産物の、国別輸入量、一人当たりの消費者量がともに世界トップレベル。

農作物別に見ても、大豆では、米国で栽培されるダイズの94%がGMOで、日本のダイズ輸入の72%は米国からで、日本の大豆輸入の6割が製油用、味噌、醤油用がそれぞれ5%、残りが食品等。

トウモロコシでは、米国で栽培されるトウモロコシの92%がGMOで、日本のトウモロコシ輸入の80%は米国からで、トウモロコシ輸入の3/4が家畜の飼料用、残りが食品加工用原材料等。

意見④

主要農作物の遺伝子組換え種子とセットで使われる除草剤などのグリホサートは、WHO機関による発がん性の指摘や、多くの専門家から様々な健康被害や健康リスクが指摘されております。EUでも議論されているように、土壌に使用しても食を通して体内に入り、蓄積するとも聞いており、国際的も安全性について議論が沸き起こっている分野です。その人体への安全性が保証されない限り、農薬認定を取り消すことを日本でも検討することを要求いたします。加えて、他の遺伝子組換え種子とセットで使われる除草剤でも、人体への安全性や生態系への影響から議論があり、食品への安全性が保証されない限り、農薬認定を取り消すことを日本でも検討することを要求いたします。

意見⑤

農家が種子の保存、利用、交換、販売する権利を認めた「食料及び農業のための植物遺伝資源に関する国際条約(略称:食料・農業植物遺伝資源条約)」の精神に則り、農家が自家採種する権利を政府が保障することを要求いたします。

「公共財」としての安全な種子を農家(百姓)が保存し毎年自家採種を行っていく古来から伝承されている日本の農業という職業を選択する自由は、日本国憲法によっても保障されています。また、この職業が守られることが、国民に安全な種子による安全な食が供給すること、すなわち日本国憲法で規定された国民の基本的人権を保障するものです。

更に、日本政府は、農家が種子の保存、利用、交換、販売する権利を認めた「食料及び農業のための植物遺伝資源に関する国際条約(略称:食料・農業植物遺伝資源条約)」を平成25年(2013年)に国会承認しています。

この条約は、昭和58年(1983年),国連食糧農業機関(FAO)の総会は,植物遺伝資源は人類の遺産であり,その所在国のいかんにかかわらず世界中の研究者等が制限なく利用することができるようにすべきであるとの考え方に基づく決議「植物遺伝資源に関する国際的申合せ」(以下「国際的申合せ」という。)から採択されたものです。

一方で種子が「公共財」であることを否定し、種子は種子企業の知的財産権であることを認めた「植物の新品種の保護に関する国際条約(UPOV)」を、日本政府は平成10年(1998年)に「UPOV1991年条約」に署名しています。しかし、このUPOVは、世界の多くの農民と、国際種子企業との間で大きな争いの原因ともなっています。

農家や行政が守り継いできたに日本の種子を「公共財」として認めず、民間企業の知的財産権を認め、使用を制限することにつながるこの条約は、日本国憲法で保障される農家の職業選択の自由を奪い、また食の安全の保障という国民の基本的人権を脅かす内容を含みます。世界各国で、この点から批准見直しが行われており、日本でもこの条約の批准見直しを要求いたします。

補足説明

 第二次世界大戦後、世界的には「緑の革命」として宣伝され 「農薬」+「化学肥料」+「F1(交配種)」をセットにした農業が日本を含めアグリビジネスとして世界に広がっていきました。

確かに、当初は、「農薬」「化学肥料」と「F1種」により、省力化、収量増というプラスの面もありましたが、その代償として、土壌汚染・土壌劣化・生物多様性の減少、その結果、作物の栄養素の減少や農薬汚染という健康の根幹である食に問題を引き起こしています。

また、F1種で、農民が翌年の種とりをできない品種の普及は、国際種子企業に世界各国の農民が従属するという構造を生み、このことにより、国際種子メーカー 対 世界各国の農民という深刻な対立が、各地で発生している事実にも目を向ける必要があると考えます。

特に、遺伝子組換え種子から生産される農産物と加工食品は、遺伝子組み換え種子とセットで使われる農薬による健康被害も含め、健康面で有害であると指摘する研究や科学的エビデンスも多く、栽培や農産物と加工食品の流通などがEU諸国、ロシアをはじめ多くの国で予防原則から禁止、制限されています。

一方で、緑の革命以降の「農薬」「化学肥料」「不自然な種」による農業の弊害を乗り越える解決策として、自然な種子を守り、人類が古来行ってきた伝統的なオーガニックな自然型の農業に回帰しようという動きが世界的に広がっています。私どもの農業生産法人設立理念もこの流れを継承するものであり、自然型農業による、食の安全、ひいては国民の健康への貢献にあります。その中でも、「公共財」としての主要農作物の種子を保存、安定供給する日本が保持することは大変大事なことだと考えています。

参考

今回の「主要農作物種子法」廃止法案の成立に思う。 日本豊受自然農代表 由井寅子

2017/04/15

「日本の種子(タネ)を守る会が4月10日(月)、衆議院第一議員会館多目的ホールで、「主要農作物種子法」廃止法案をテーマに院内集会が開催されましたが、YouTubeに公開された内容を視聴した感想を書かせていただきます。

戦後、米、麦、大豆など農家への主要穀物の種子の安定供給や、原種の種の保存を都道府県が行うことの拠り所となってきた「主要農作物種子法」が廃止されることは残念なことです。今後、これらの種の安定供給における都道府県の支援がなくなっていく可能性があるので、農家自体が自家採種での種取りを徹底し、種の保存までしっかりやっていかなければ、各地に伝わる穀物の種を守って農業を行っていくことができなくなる時代になるかもしれません。さらに都道府県が種子の安定供給や原種の種の保存ができなくなると、国内外種子メジャー企業が日本でも主要穀物の種子を独占的に扱うようになるかもしれません。そして問題となるのはその企業が、利益追求をより優先するのではないかという点です。国民の健康や食の安全などの国益を最優先に考えてくれるだろうかという懸念があります。

院内集会では農林省の担当者が、日本で民間の種子企業が供給を始めているハイブリッド米が紹介していました。F1をはじめハイブリッドな種とは、農家がたとえ種とりしても来年は同じような品質の米ができない、すなわち将来にわたって自家採種ができず、種もみを種子企業から購入し続けることになる。つまり、米、麦、大豆といった主要穀物生産において日本の農家が国内外種子メジャーに支配されることになりかねないと思います。しかも主食の米においても、雄性不稔などのF1種や遺伝子組換などの安全性に疑問のある品種も既に開発されています。

例えば、雄性不稔・F1の種というのは、ミトコンドリアの遺伝子異常のために、ATPが作られず、エネルギー不足のため、雄蘂(おしべ)の花粉ができない奇形の種です。花粉を作るには大量のエネルギーが必要なのです。そういうミトコンドリアの遺伝子異常のものを食べると、その遺伝子が生殖器に行って、その遺伝子と情報交換し、私たちの生殖器自体が遺伝子異常になり、精子を作れない体になることもあり得ない話ではないのです。なぜなら、実際、食べ物の遺伝子が体の細胞とも情報交換していることが最近の研究からわかってきているからです。つまり、変異した遺伝子をもつ食物を食べると、私たちの臓器自体が変異した遺伝子に変質させられる可能性があるということです。

精子は花粉と同様、大量に細胞分裂するため、大量のエネルギー(ATP)を必要とします。したがって生殖器のミトコンドリアが遺伝子異常のミトコンドリアになってしまうと、精子が形成されなくなってしまいます。近年、無精子症の男性が急増しており、この原因もやはりミトコンドリア異常によるものですが、雄性不稔の急増(現在、野菜の9割がF1でその多くは雄性不稔)と大いに関係がある可能性があります。

まして遺伝子組み換え作物は、組み換えた遺伝子部分だけが変化するのではなく、その周囲の遺伝子が大規模に変異してしまいます。そういう意味で遺伝子組み換え技術は未だ未熟な技術なのです。あるいは放射線をかけて遺伝子を変異させ品種改良している種もそうです。そのような遺伝子異常の作物を食べることは、人類の存続に関わるとても危険なことかもしれないのです。

今回の種子法廃止法案成立で新たに思った最も大事なポイントは「種が安全か?」という点につきます。農家がいかに主導権を持って種をとる、種をキープしていけるかです。特に自分たちの土地でできる種をずっと作り続けていく。そのためには、国にも地方自治体にも企業にも頼らず、昔ながらの種をとる農家の原点に戻るべきではないかと思います。また、自分たちが種を確保していく実践が農家に問われているのだと思います。そして、人々の命を守るためにも、農家が自家採種をして自然な種で農業を行う権利は守っていかなければなりません。」

遺伝子組み換え種の問題をさらに理解する上で役に立つ参考資料

参考書籍

  • ジェフリー・M・スミス『偽りの種子―遺伝子組み換え食品をめぐるアメリカの嘘と謀略』家の光協会 2004 年・アンディ
  • リーズ『遺伝子組み換え食品の真実』 白水社 2013年・マリー=モニク
  • ロバン『モンサント―世界の農業を支配する遺伝子組み換え企業』作品社 2015年
  • 安田節子『自殺する種子―アグロバイオ企業が食を支配する』平凡社新書 2009年
  • 天笠啓祐『遺伝子組み換え食品入門(プロブレム Q&A)』緑風出版 2013 年
  • 安田美絵『サルでもわかるTPP』合同出版 2012年

参考ウェブサイト

参考映像

DARK 法案、遺伝子組み換え食品表示義務化運動へのジェフリー・M・スミス氏からのメッセージ
2012 年ゴールドマン環境賞を受賞したソフィア・ガティカさんスピーチ
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