今回の「主要農作物種子法」廃止法案の成立に思う。 日本豊受自然農代表 由井寅子

日本の種子(タネ)を守る会が4月10日(月)、衆議院第一議員会館多目的ホールで、「主要農作物種子法」廃止法案をテーマに院内集会を開催しました。当日は洞爺農場での農林業指導のため、代表の由井寅子は院内集会には直接参加こそできませんでしたが、即日ユーチューブに公開された勉強会及び農林水産省スタッフとの3時間半の質疑応答を視聴し、以下のような感想を述べました。

「今回映像で質疑応答の様子も拝見しました。戦後、米、麦、大豆など農家への主要穀物の種子の安定供給や、原種の種の保存を都道府県が行うことの拠り所となってきた「主要農作物種子法」が廃止されることは残念なことです。今後、これらの種の安定供給における都道府県の支援がなくなっていく可能性があるので、農家自体が自家採種での種とりを徹底し、種の保存までしっかりやっていかなければ、各地に伝わる穀物の種を守って農業を行っていくことができなくなる時代になるかもしれません。さらに都道府県が種子の安定供給や原種の種の保存ができなくなると、国内外種子メジャー企業が日本でも主要穀物の種子を独占的に扱うようになるかもしれません。そして問題となるのはその企業が、利益追求をより優先するのではないかという点です。国民の健康や食の安全などの国益を最優先に考えてくれるだろうかという懸念があります。

院内集会では農林省の担当者が、日本で民間の種子企業が供給を始めているハイブリッド米が紹介していました。F1をはじめハイブリッドな種とは、農家がたとえ種とりしても来年は同じような品質の米ができない、すなわち将来にわたって自家採種ができず、種もみを種子企業から購入し続けることになる。つまり、米、麦、大豆といった主要穀物生産において日本の農家が国内外種子メジャーに支配されることになりかねないと思います。しかも主食の米においても、雄性不稔などのF1種や遺伝子組換などの安全性に疑問のある品種も既に開発されています。

例えば、雄性不稔・F1の種というのは、ミトコンドリアの遺伝子異常のために、ATPが作られず、エネルギー不足のため、雄蘂(おしべ)の花粉ができない奇形の種です。花粉を作るには大量のエネルギーが必要なのです。そういうミトコンドリアの遺伝子異常のものを食べると、その遺伝子が生殖器に行って、その遺伝子と情報交換し、私たちの生殖器自体が遺伝子異常になり、精子を作れない体になることもあり得ない話ではないのです。なぜなら、実際、食べ物の遺伝子が体の細胞とも情報交換していることが最近の研究からわかってきているからです。つまり、変異した遺伝子をもつ食物を食べると、私たちの臓器自体が変異した遺伝子に変質させられる可能性があるということです。

精子は花粉と同様、大量に細胞分裂するため、大量のエネルギー(ATP)を必要とします。したがって生殖器のミトコンドリアが遺伝子異常のミトコンドリアになってしまうと、精子が形成されなくなってしまいます。近年、無精子症の男性が急増しており、この原因もやはりミトコンドリア異常によるものですが、雄性不稔の急増(現在、野菜の9割がF1でその多くは雄性不稔)と大いに関係がある可能性があります。

まして遺伝子組み換え作物は、組み換えた遺伝子部分だけが変化するのではなく、その周囲の遺伝子が大規模に変異してしまいます。そういう意味で遺伝子組み換え技術は未だ未熟な技術なのです。あるいは放射線をかけて遺伝子を変異させ品種改良している種もそうです。そのような遺伝子異常の作物を食べることは、人類の存続に関わるとても危険なことかもしれないのです。

今回の種子法廃止法案成立で新たに思った最も大事なポイントは「種が安全か?」という点につきます。農家がいかに主導権を持って種をとる、種をキープしていけるかです。特に自分たちの土地でできる種をずっと作り続けていく。そのためには、国にも地方自治体にも企業にも頼らず、昔ながらの種をとる農家の原点に戻るべきです。また、自分たちが種を確保していく実践が農家に問われているのだと思います。そして、人々の命を守るためにも、農家が自家採種をして自然な種で農業を行う権利は守っていかなければなりません。」

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